会社員がフリーランスになる際、失業手当(失業保険)は受給できる?

会社員が失業して一定の条件を満たす場合には、それまで給与から徴収されていた雇用保険に対応する「失業手当」を受給することができます。
それでは、会社員が会社を辞めてフリーランスになる場合に、「失業手当」を受給することができるのでしょうか。ポイントを解説します。
一定の条件を満たし、失業状態にあれば「失業手当」を受給できる
「失業手当」は、求職者が安定した生活を送りつつ、1日でも早く再就職するための支援として給付されるものです
「失業手当」を受け取るためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入し、保険料を支払っている
- 離職の日以前2年間に12カ月以上の雇用保険の被保険者期間がある(倒産・解雇等の理由により離職した場合、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した場合は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上ある)
- 就労の意志と能力があり、求職活動を行っている
「失業手当」を受け取るには、これらの 3つの条件を満たした上で、ハローワークが定める「失業の状態」であることが前提となります。
「失業の状態」とは、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」とされています。
そのため、妊娠、出産、育児や病気、ケガですぐに就職できない、就職するつもりがない、家事に専念、学業に専念、会社などの役員に就任している、自営業の方などは、「失業手当」を受け取ることができません。
会社員を辞めてフリーランスになる場合においても、先に示した3つの条件を満たし、かつ「失業の状態」である期間中は、「失業手当」を受給できる可能性があります(フリーランスとしての「開業届」を提出すると「失業の状態」ではなくなります)。
自分が受け取れる「失業手当」の額や期間を予め把握した上で、計画的に行動しましょう。
失業手当の給付日数は、退職理由や年齢、雇用保険の被保険者期間により求められる
失業手当の給付日数は、離職理由や年齢、被保険者だった期間などによって決まります。
自己都合退職・定年退職などの場合の給付日数
被保険者期間 | |||
---|---|---|---|
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合退職・自己都合退職で特定理由離職者の場合の給付日数
離職時の年齢 | 被保険者期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上 35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上 45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上 60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上 65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業手当の給付金額は、年齢や退職前の賃金などにより求められる
失業手当の給付金額は、「給付日数×基本手当日額」です。
「基本手当日額」は、離職者の「賃金日額(退職前6か月の賃金合計÷180)」と「給付率」をもとに以下の計算式で算出されます。
基本手当日額 = 賃金日額(退職前6か月の賃金合計÷180) × 給付率(50~80%)
「基本手当日額」と「賃金日額」には上限額と下限額が設定されています。上限額・下限額は毎年見直しされますので、厚生労働省のHPでご確認ください。以下の上限額・下限額は令和6年8月1日時点のものです。
賃金日額・基本手当日額の上限額
離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 基本手当日額の上限額 |
---|---|---|
29歳以下 | 14,130円 | 7,065円 |
30~44歳 | 15,690円 | 7,845円 |
45~59歳 | 17,270円 | 8,635円 |
60~64歳 | 16,490円 | 7,420円 |
賃金日額・基本手当日額の下限額
離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 基本手当日額の上限額 |
---|---|---|
全年齢共通 | 2,869円 | 2,295円 |
年齢別の基本手当日額
離職時の年齢 | 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|---|
29歳以下 | 2,869円以上 5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上 12,790円以下 | 80%~50% | 4,160円~6,395円 | |
12,790円超 14,130円以下 | 50% | 6,395円~7,065円 | |
14,130円(上限額)超 | - | 7,065円(上限額) | |
30~44歳 | 2,869円以上 5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上 12,790円以下 | 80%~50% | 4,160円~6,395円 | |
12,790円超 15,690円以下 | 50% | 6,395円~7,845円 | |
15,690円(上限額)超 | - | 7,845円(上限額) | |
45~59歳 | 2,869円以上 5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上 12,790円以下 | 80%~50% | 4,160円~6,395円 | |
12,790円超 17,270円以下 | 50% | 6,395円~8,635円 | |
17,270円(上限額)超 | - | 8,635円(上限額) | |
60~64歳 | 2,869円以上 5,200円未満 | 80% | 2,295円~4,159円 |
5,200円以上 11,490円以下 | 80%~45% | 4,160円~5,170円 | |
11,490円超 16,490円以下 | 45% | 5,170円~7,420円 | |
16,490円(上限額)超 | - | 7,420円(上限額) |
失業手当受給の手続き
失業手当を受給するためには、ハローワークへの申請や説明会への参加など、所定の手続きを踏む必要があります。
手続は大きく分けて以下の 5ステップです。
以下の必要書類を準備しましょう。
- 雇用保険被保険者離職票-1、雇用保険被保険者離職票-2
- マイナンバーカード
マイナンバーカードがない場合は、以下の <1> と <2>
<1> マイナンバーカードが確認できる書類(いずれかひとつ)
通知カード、個人番号の記載がある住民票(住民票記載事項証明書)
<2> 身元確認書類
(1) 運転免許証、官公署が発行した身分証明書・写真付き資格証明書等のうち1種類
(2) 公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書などのうち異なる2種類(コピー不可) - 証明写真(縦3cm×横2.4cm)2枚
以降の支給申請を含め、すべての手続きでマイナンバーカードを持参する場合は不要 - 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
雇用保険被保険者離職票-1の金融機関指定届に金融機関による確認印がある場合、通帳は不要 - 船員であった人は船員保険失業保険証および船員手帳
現住所を管轄するハローワークへ、STEP1で用意した書類を持参して、求職の申し込みをしましょう(失業手当を受給するには、再就職の意思を示すため、求職の申し込みが必要です)。
ここでおこなうことは、主に以下の3点です。
- 求職の申し込み
- 離職票ほか必要書類の提出
- 雇用保険説明会の日時決定
求職の申し込みをおこない、必要書類を提出した日が「受給資格決定日」です。この日から7日間は「待機期間」となり、失業手当は受給できません。
STEP2で決まった日時に、雇用保険説明会に参加しましょう。このタイミングで、「失業認定日」が決まります。
STEP3で決まった失業認定日にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出して失業の認定を受けましょう。
失業の認定を受けるには、原則として月2回以上の求職活動が必要で、失業認定申告書に実績を記載しなければなりません。
失業手当は、失業認定日から(給付制限がある場合は2回目の失業認定日から)通常5営業日後に指定の口座に振り込まれます。
以降、原則として4週間に1回の認定日に、失業の認定を受ける必要があります。
失業手当の給付が開始される時期
自己都合で退職した場合には給付制限期間がある
失業手当を受給する場合、自己都合による退職では、7日間の待機期間に加えて1か月の給付制限期間が設けられています(2025年4月より、それまでの2か月から1か月に短縮されました)。
そのため、実際の給付開始までの期間は、ハローワークでの手続きに必要な日数を含めると約1か月半かかります。
ただし、5年以内に3回以上自己都合で退職した場合は、給付制限期間が3か月となる点に注意が必要です。
なお、離職日前1年以内に厚生労働省が定める教育訓練を受講していた場合、または離職後に受講する場合、給付制限期間が撤廃され、待機期間7日間を経ればすぐに失業給付を受けられるようになります。
失業手当を受給したら、「再就職手当」が受け取れることもある
失業手当の受給中に再就職をした場合、一定の条件を満たすと「再就職手当」(お祝い金)がもらえます。
再就職手当は、「失業手当を満額もらうまで再就職しないようにしよう」と考え、失業期間が長くなってしまうことを防ぎ、早期の再就職を促すために設けられた制度です。
再就職手当は、失業手当の所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して安定した職業に就き、以下の8つの要件すべてを満たした場合に支給されます。
- 就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
- 7日間の待期期間満了後の就職であること
- 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
- 再就職先が前職と関係ないこと(前職の関連企業や取引先なども含む)
- 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1カ月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
- 過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと
- 失業手当の受給資格決定前から内定していた再就職先でないこと
- 雇用保険の被保険者であること
再就職手当の計算式は、「基本手当日額×支給残日数×支給率」です。基本手当の所定給付日数の1/3以上を残して就職した場合は支給率が60%、2/3以上を残した場合は支給率が70%になります。
再就職手当は、基本的に企業等へ再就職することを前提としているため、フリーランスとして活動しようとする場合には、それが安定的・継続的に続けられる「業」であることを説明できることが重要です(最終的にはハローワークの判断になります)。
まとめ
会社員が会社を辞めてフリーランスになる際に、「失業手当」や「再就職手当」を受給することは可能です。
自分が受け取れる「失業手当」の額や期間を予め把握した上で、計画的に行動しましょう。
「失業手当」を申請して給付が始まるまでは、収入がない状態となりますし、給付される金額は会社員だった頃の給与を上回ることはありませんので、失業中の生活に必要な資金を予め用意しておくことも重要です。
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