会社員がフリーランスになる際、失業手当(失業保険)は受給できる?

会社員がフリーランスになる際、失業手当(失業保険)は受給できる?

会社員が失業して一定の条件を満たす場合には、それまで給与から徴収されていた雇用保険に対応する「失業手当」を受給することができます。

それでは、会社員が会社を辞めてフリーランスになる場合に、「失業手当」を受給することができるのでしょうか。ポイントを解説します。

一定の条件を満たし、失業状態にあれば「失業手当」を受給できる

「失業手当」は、求職者が安定した生活を送りつつ、1日でも早く再就職するための支援として給付されるものです
「失業手当」を受け取るためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

「失業手当」を受け取るには、これらの 3つの条件を満たした上で、ハローワークが定める「失業の状態」であることが前提となります。

「失業の状態」とは、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」とされています。

そのため、妊娠、出産、育児や病気、ケガですぐに就職できない、就職するつもりがない、家事に専念、学業に専念、会社などの役員に就任している、自営業の方などは、「失業手当」を受け取ることができません。

会社員を辞めてフリーランスになる場合においても、先に示した3つの条件を満たし、かつ「失業の状態」である期間中は、「失業手当」を受給できる可能性があります(フリーランスとしての「開業届」を提出すると「失業の状態」ではなくなります)。

自分が受け取れる「失業手当」の額や期間を予め把握した上で、計画的に行動しましょう。

失業手当の給付日数は、退職理由や年齢、雇用保険の被保険者期間により求められる

失業手当の給付日数は、離職理由や年齢、被保険者だった期間などによって決まります。

自己都合退職・定年退職などの場合の給付日数

被保険者期間
10年未満10年以上20年未満20年以上
65歳未満90日120日150日

会社都合退職・自己都合退職で特定理由離職者の場合の給付日数

離職時の年齢被保険者期間
1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳以上
35歳未満
90日120日180日210日240日
35歳以上
45歳未満
90日150日180日240日270日
45歳以上
60歳未満
90日180日240日270日330日
60歳以上
65歳未満
90日150日180日210日240日

失業手当の給付金額は、年齢や退職前の賃金などにより求められる

失業手当の給付金額は、「給付日数×基本手当日額」です。

「基本手当日額」は、離職者の「賃金日額(退職前6か月の賃金合計÷180)」と「給付率」をもとに以下の計算式で算出されます。

基本手当日額 = 賃金日額(退職前6か月の賃金合計÷180) × 給付率(50~80%)

「基本手当日額」と「賃金日額」には上限額と下限額が設定されています。上限額・下限額は毎年見直しされますので、厚生労働省のHPでご確認ください。以下の上限額・下限額は令和6年8月1日時点のものです。

賃金日額・基本手当日額の上限額

離職時の年齢賃金日額の上限額基本手当日額の上限額
29歳以下14,130円7,065円
30~44歳15,690円7,845円
45~59歳17,270円8,635円
60~64歳16,490円7,420円

賃金日額・基本手当日額の下限額

離職時の年齢賃金日額の上限額基本手当日額の上限額
全年齢共通2,869円2,295円

年齢別の基本手当日額

離職時の年齢賃金日額給付率基本手当日額
29歳以下2,869円以上 5,200円未満80%2,295円~4,159円
5,200円以上 12,790円以下80%~50%4,160円~6,395円
12,790円超 14,130円以下50%6,395円~7,065円
14,130円(上限額)超7,065円(上限額)
30~44歳2,869円以上 5,200円未満80%2,295円~4,159円
5,200円以上 12,790円以下80%~50%4,160円~6,395円
12,790円超 15,690円以下50%6,395円~7,845円
15,690円(上限額)超7,845円(上限額)
45~59歳2,869円以上 5,200円未満80%2,295円~4,159円
5,200円以上 12,790円以下80%~50%4,160円~6,395円
12,790円超 17,270円以下50%6,395円~8,635円
17,270円(上限額)超8,635円(上限額)
60~64歳2,869円以上 5,200円未満80%2,295円~4,159円
5,200円以上 11,490円以下80%~45%4,160円~5,170円
11,490円超 16,490円以下45%5,170円~7,420円
16,490円(上限額)超7,420円(上限額)

失業手当受給の手続き

失業手当を受給するためには、ハローワークへの申請や説明会への参加など、所定の手続きを踏む必要があります。

手続は大きく分けて以下の 5ステップです。

STEP1
必要書類を準備する

以下の必要書類を準備しましょう。

  • 雇用保険被保険者離職票-1、雇用保険被保険者離職票-2
  • マイナンバーカード
    マイナンバーカードがない場合は、以下の <1> と <2>
    <1> マイナンバーカードが確認できる書類(いずれかひとつ)
    通知カード、個人番号の記載がある住民票(住民票記載事項証明書)
    <2> 身元確認書類
    (1) 運転免許証、官公署が発行した身分証明書・写真付き資格証明書等のうち1種類
    (2) 公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書などのうち異なる2種類(コピー不可)
  • 証明写真(縦3cm×横2.4cm)2枚
    以降の支給申請を含め、すべての手続きでマイナンバーカードを持参する場合は不要
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
    雇用保険被保険者離職票-1の金融機関指定届に金融機関による確認印がある場合、通帳は不要
  • 船員であった人は船員保険失業保険証および船員手帳
STEP2
ハローワークで手続きをする

現住所を管轄するハローワークへ、STEP1で用意した書類を持参して、求職の申し込みをしましょう(失業手当を受給するには、再就職の意思を示すため、求職の申し込みが必要です)。

ここでおこなうことは、主に以下の3点です。

求職の申し込みをおこない、必要書類を提出した日が「受給資格決定日」です。この日から7日間は「待機期間」となり、失業手当は受給できません。

STEP3
雇用保険説明会に参加する

STEP2で決まった日時に、雇用保険説明会に参加しましょう。このタイミングで、「失業認定日」が決まります。

STEP4
失業認定日にハローワークへ行く

STEP3で決まった失業認定日にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出して失業の認定を受けましょう。

失業の認定を受けるには、原則として月2回以上の求職活動が必要で、失業認定申告書に実績を記載しなければなりません。

STEP5
失業手当の受給

失業手当は、失業認定日から(給付制限がある場合は2回目の失業認定日から)通常5営業日後に指定の口座に振り込まれます。

以降、原則として4週間に1回の認定日に、失業の認定を受ける必要があります。

失業手当の給付が開始される時期

自己都合で退職した場合には給付制限期間がある

失業手当を受給する場合、自己都合による退職では、7日間の待機期間に加えて1か月の給付制限期間が設けられています(2025年4月より、それまでの2か月から1か月に短縮されました)。

そのため、実際の給付開始までの期間は、ハローワークでの手続きに必要な日数を含めると約1か月半かかります。

ただし、5年以内に3回以上自己都合で退職した場合は、給付制限期間が3か月となる点に注意が必要です。

なお、離職日前1年以内に厚生労働省が定める教育訓練を受講していた場合、または離職後に受講する場合、給付制限期間が撤廃され、待機期間7日間を経ればすぐに失業給付を受けられるようになります。

失業手当を受給したら、「再就職手当」が受け取れることもある

失業手当の受給中に再就職をした場合、一定の条件を満たすと「再就職手当」(お祝い金)がもらえます。

再就職手当は、「失業手当を満額もらうまで再就職しないようにしよう」と考え、失業期間が長くなってしまうことを防ぎ、早期の再就職を促すために設けられた制度です。

再就職手当は、失業手当の所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して安定した職業に就き、以下の8つの要件すべてを満たした場合に支給されます。

  • 再就職先が前職と関係ないこと(前職の関連企業や取引先なども含む)
  • 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1カ月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
  • 過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと
  • 失業手当の受給資格決定前から内定していた再就職先でないこと
  • 雇用保険の被保険者であること

再就職手当の計算式は、「基本手当日額×支給残日数×支給率」です。基本手当の所定給付日数の1/3以上を残して就職した場合は支給率が60%、2/3以上を残した場合は支給率が70%になります。

再就職手当は、基本的に企業等へ再就職することを前提としているため、フリーランスとして活動しようとする場合には、それが安定的・継続的に続けられる「業」であることを説明できることが重要です(最終的にはハローワークの判断になります)。

筆者は、フリーランスとして運輸業と小売業を開業する形で再就職手当を申請しましたが、小売業のうち古物の販売をおこなうのに必要な「古物商許可」を予め取得していたことから、「再就職手当」の手続がスムーズに進みました。

まとめ

会社員が会社を辞めてフリーランスになる際に、「失業手当」や「再就職手当」を受給することは可能です。

自分が受け取れる「失業手当」の額や期間を予め把握した上で、計画的に行動しましょう。

「失業手当」を申請して給付が始まるまでは、収入がない状態となりますし、給付される金額は会社員だった頃の給与を上回ることはありませんので、失業中の生活に必要な資金を予め用意しておくことも重要です。

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